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■2009.03.23 東郷美沙   (1/2)

怪盗キッドにとって、冬は仕事の好きな季節だ。
空気が澄んでいるから仕事衣装の白色は夜の黒色と相反して目立つ。
それゆえ人の目をよく引く代わりに人の目を欺くマジックが仕掛けやすく、仕事がやり易いからだ。


だが、今日はそんなマジックを利用して己の姿を消す必要はない。
何故なら鈴木財閥の屋敷に納められている、希少な宝石であるレッドスピネルのネックレスを盗むと宣告してきたキッドを捕まえるため――――という名目の工藤新一を演じることにしたからだ。
操作に協力することを目暮警部に伝え、新一に変装した快斗は迎えに来てもらったパトカーで鈴木家へ向かっているところだった。


この姿になるのは何度目かだが、案外気に入っている。
皆探偵の新一を信じていて捜査の情報を簡単に得ることが出来るし、何故だか知らないが新一と顔立ちが似ているせいで変装を見破られる危険性がないからだ。
――――まぁ、メガネの探偵坊主以外を除いてだが。


幸いなことに、いつも必死に蘭を守っている小さな騎士は同級生達とスキー旅行へ行っているとの情報が入っている。
そして蘭は園子の家に泊まる予定だとも。


(やっかいな奴もいないし、今夜の仕事は楽勝だな〜。)


知らず、快斗は唇に笑みを浮かべた。


何回か下見に忍び込んだが、レッドスピネルはいつも鈴木夫人専用の金庫の中に納められていた。
だがキッドが絡むとなると、当日隠し場所をどこかに移動する可能性がある。
その為に新一の姿になって詳しい情報を掴むつもりだった。


今夜午後10時――――決行。








セキュリティーの解かれた鈴木邸の門をくぐると、快斗は意気揚々として警視庁のパトカーから降りた。
冬の夜は早い。すでに空は暗くなっていたが、ここ鈴木家は逆に光に包まれていた。庭中に巨大ライトが設置され、眩い光が夜に向かって放たれている。
久しぶりのキッドの出現だけあって警察も張り切っているようだ。多くの警察官が動員され、キッドを見逃すまいとすでに厳戒態勢である。


(おーおー、精が出ますねぇ)


快斗は横目でそれらを眺めて、前もって調べておいた脱出経路や警備が手薄な場所を確認しながらゆっくりめに歩いた。


玄関で素性検査を受けた後、邸内の厳戒警備の中応接間に通された。
ソファに腰を掛けていたのは鈴木家の主鈴木史郎と目暮警部だ。
入ってきた”新一”に気がつくと、二人は立ち上がり快斗に近づいてきた。


「久しぶりだね、工藤君。今日はよろしく頼むよ」
「おお、工藤くん。すまんね、この寒い中」


クールな表情を顔に乗せて快斗はどうも、と軽く挨拶をする。
いけしゃしゃあと「もちろん、キッドを捕まえてみせますよ。この工藤新一にお任せください」と名探偵の主張も忘れない。
キッドの予告時間や予告状について目暮警部から情報を聞いた後、肝心の警備情報を探ってみた。


「それで、警備の方はどういう風になってるんです?」
「そのことだがね……」


目暮警部と鈴木氏はお互いに顔を見合わせ、困った様子で苦笑する。


「何かあったんですか?」





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