「明けましておめでと」
新しい年が明ける夜。
0時になった瞬間、快斗はそう言って蘭に口づけた。
甘く溺れてしまいそうなキスに耐えて、快斗の胸をそっと押し戻す。
「……なんで?」
「まだ……わたし何も言ってないのに……」
潤んだ目で見上げながら抗議され、先走った自分に気づき「あ、そっか」と快斗は苦笑した。
「んじゃ、どーぞ」
ベッドの上であぐらをかいているが、両手を膝に置き、蘭の言葉を待つ。
「……おめでと。今年もずっと一緒にいてね」
ずっと自分の物にならないと思っていたその笑顔を向けられて、快斗の胸が甘く痛む。
「蘭ちゃん」
もっと気の利いた言葉を返したいのに、幸せ過ぎて彼女の名前を紡ぐのがやっとだ。
快斗が蘭の腕を掴んで、自分の元に引き寄せる。
「あーまだ信じらんねえ」
蘭が腕の中にいること。
一緒に新しい年を迎え、そしてこれからも同じ時を過ごすこと。
「快斗君、そればっかり」
蘭はそっと自分の腕を快斗の背に回した。
自分のいる場所はここだと。
快斗はぎゅっと強く蘭の体を抱きしめた後、もう一度蘭の名前を呼んだ。
静かに顔を上げた蘭がいとしくてたまらない。
「愛してるよ」
快斗は囁いて、唇を重ねた。
口づけはすぐに深いものに変わる。
お互いの存在をさらに深く感じ合って止まらない。
いつも受け身になる蘭も懸命に応えて来て、快斗は蘭の背を支えながらゆっくりと押し倒した。
ベッドの感触を背中に受けて、蘭の体が震える。
快斗の唇が、首筋へ胸へと落ち、快斗の手によっていつの間にかパジャマのボタンが外れてるのに気づいて、蘭はようやく我に返る。
「ちょ、快斗君っ。何してるのっ!」
「何って、蘭ちゃんの体にも新年の挨拶」
ニヤリと笑ってとんでもない事を言ってくる。
「や……んっ……だ、だめっ」
胸を弄られて、蘭は息も絶え絶えに告げる。
「……へ? なんで?」
今度こそいいのだろうと思っていたのに。手を止めて、快斗は間抜けな声で問う。
「今日は……一緒に初詣行こうって言ったじゃない」
確かに言った。
正月らしくお節とお雑煮を食べて、近くの神社に参拝に行こうと。
「言ったけど……なんで?」
「だから……その……起きあがれなくなる……から」
蘭の顔が真っ赤に染まってる。
「あ……」
言われてみれば、理由はもっともだと快斗は思った。
感じやすくて、腕の中で乱れる蘭を抱いて加減しろというのが無理な話だ。時々、翌朝辛そうにしてるのを見て反省はしてるので(次に活かされないが)自覚はある。
だけど、年末の慌ただしさのせいで触れるのは久しぶりなのだ。
「それじゃ、一回だけとか……だめ?」
諦めきれず、お伺いを立てる。
「……だめ」
そんな露骨にと、恥ずかしがっていられない。
大体「一回」だなんて、快斗側の――に決まってる。その間、自分が何度達して意識を失うかわからない。
それで朝起きて、着物を着て出かけるなんて、きっとできない。
「一緒に初詣行きたいの」
着物が楽しみだと言ってくれたのも嬉しかった。だから……。
殺し文句と、はだけたままのまぶしい体の間で、快斗はグラグラと揺れた。……そうして葛藤の末、「参りました」と自分の負けを認めた。
結局、蘭には敵わない。
「今日は帰ってきたらもう止めないからな」
明日は予定がないから、覚悟しておけよ?
快斗は、蘭の体をぎゅっと抱きしめながら、そう宣告した。
一年分の理性を総動員して、今夜は一緒に寝るだけにしよう。
それでも、快斗にとって、幸せな一年の始まりに違いはなかった。
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